#01■原子内部の法則

モノは部品に分解できます。 自動車は、エンジンやタイヤやドアなど、多数の部品からできています。 その部品も、更に小さな部品に分けることができます。 どんどん分解を続けると、鉄や、アルミや、ゴムなど、原材料の塊になります。

それらの素材も、たくさんの「原子」が集まったものです。 たとえば「水」は水素原子と酸素原子が合体したものです。 自動車も、犬も、トウモロコシも、この世に存在する全てのモノは、多種の「原子」が、多数組み合わさってできています。

原子は究極の部品です。 それでは、その内部はどうなっているのでしょうか?
実は、更に部品があって、原子は「原子核」と「電子」とからできています。

どんな種類の原子でも原子核は必ずひとつですが、電子の数は異なります。

電子が1つなら「水素」、電子が2つなら「ヘリウム」、3つなら「リチウム」、4つだと「ベリリウム」です。 この順序を覚えるために「水兵リーベ僕の船」という語呂合わせを暗記した記憶があるかもしれません。

水素も、ヘリウムも、リチウムも、どの原子も実は同じ部品からできています。
電子という部品が「いくつ」入っているか、その「数」の違いがあるだけです。
このことは、全部で約百種ある原子の全てにあてはまります。

水素と鉄とカルシウムは、どう考えても同じ部品からできているとは思えません。 しかし、それは原子よりも大きい世界での常識です。 原子の内側に入った途端、それまで「質」の違いと信じていたものが、「量」の違いに姿を変えてしまいます。

原子より内側と外側には、全く異なる2つの世界があります。 この境目の壁はとても大きく、一方の常識は他方に通用しません。 当然、物理法則も全く違います。通常の物理学が通用しない、原子の内側の物理学が、量子力学です。

原子の部品が電子です。 同じ電子なのに、それがいくつ結びつくかの差だけで、あらゆる種類の原子を作れます。 このような特異な性質をもった部品のことを「量子」と呼びます。 その「量子」の物理法則なので、「量子力学」といいます。

物理の世界で先に発見されたため、量子力学という名前になっていますが、 実は、もっと広い、「状態の世界」のメカニズムです。 人間の意識の世界や、抽象概念の構造可視化など、新しい世界に踏み込むヒントが隠れています。 次へ >