#08■科学観の転換

原因が法則に作用して結果を生むというパラダイムは、近代科学の父であるニュートンの考え方そのものです。 経済学も、医学も、社会学も、消費者行動論も、現在の近代科学は、文系、理系を問わず、このニュートン物理学の影響を受けています。

ガリレオやニュートンの本当の業績は、物理の世界ではなくて、中世のキリスト教的世界観から、近代科学観への、大転換の礎を提供したところにあります。
量子力学は、その近代科学から、更に次の時代への、きっかけとなるものです。

近代科学は「法則」を研究します。法則が「未知」だからです。 しかし量子数理では固有状態の方を探すのですから、「未知なもの」が逆になります。

?→作用素→?

 
近代科学では、データ(原因)を、計算式(法則)に入れると「結果」が得られます。
これに対して、データを量子系として扱いたい場合には、作用素の位置に置いて、その固有状態を求めることになります。 固有状態は「結果」と似ているようですが、入力とも一致している点で大きく異なります。 作用素(データ)から固有状態を「計算する」ことはできません。 それが固有状態かどうかの「検算」ができるだけです。

固有状態→データ→固有状態

データを置く位置が違うだけではなくて、「計算式」が存在しないことも量子系の特徴です。 近代科学では、計算式(法則)を考え出すのは人間です。 量子系では、その必要がありません。 強いて言えば、作用素のデータの裏側に、見えない形で法則が存在しています。

量子数理は、近代科学から「次世代」へと、科学観を転換します。  次へ >